自動車学校を中退した話(過去ログ)

【過去のブログに書いた話ですが、反響が多かったので再掲します。】

 
本日をもって普通自動車の仮免許が取れず自動車学校を中退した。その日々を振り返ろうと思う。いわゆる免許合宿の話だ。
 
少しの単位を残して留年していた私は、秋の必修科目の単位をまだ取り終えていない為に春学期は休学し、秋に復学して卒業する予定だ。
 
春学期を有意義に使おうと思い、先ず一番初めに普通車の運転免許を取ろう、と思いたった。
地元は車社会で、父親が交通関係の仕事や就職に明るいために”普通免許は絶対に取れ”とずっと言われていた。
車に乗らずとも、運転免許を持っていることが就職に大きく関わるのは明らかな事で、それを資格欄に書けるか書けないかと言うのは社会的に大きな隔たりがある。
4月は、通常は社会人も学生も新生活を始める、いわば合宿で免許を取る上でのオフシーズン、というわけでもっとも安く運転免許の講習を受けることができる時期だ。
部屋が一人部屋で、三食付き。乱れがちな生活リズムが正されるというアドバンテージもある。体調も寛解しつつある。そのこともあり、私は免許合宿をするに至った。
国内で一人旅をするのが好きな私は、どうせ行くなら遠くが良い、と、関東から遠く離れた四国で、2週間弱泊まり込みで教習を受けること決めた。
入校日の三日前に東京を出発し、京都の鴨川で桜を眺めたり、岡山のゲストハウスに泊まり遠方の知人と遊んでから四国にある教習所へと向かった。
 
教習のペースはとても早い。しかし、教習のほかにする事はほとんど無いため忙しさに追われるということもなく、無理のないスケジューリングでトントン拍子に勧められていく。
2週間毎日講習はあり、2回の筆記検定と2回の実技検定が行われ、それをパスすると次に進める仕組みだ。
通常でなら1、2回で最初の筆記検定を終わらせなければならなかったところ、5回も落ちてしまった。簡単なペーパーテストなのだが、私にはなんだか難しく、何を問われているのかよくわからなかった。そしてペーパーテストをなんとかパスすると、仮免許試験が受けられるのだが、そこの実技でも何度も何度も大きな失敗をし、何度も補習を受けることとなり、見兼ねた講師はたくさんのアドバイスをくれた。
そこで仲良くなった同日入校者たちにも慰めてもらい、つらいながらも真面目に受けていた。
通常の人々でなら、その仮免許試験も1、2回受ければ簡単に取れるものの筈だったが、私はいつまでもノウハウを理解できず、多くのメモを取っても何を言われているのかわからないことが続く上に、うまくいくやり方を教えてもらって実践しても、どうしてもミスしてしまうのであった。
私がペーパーテストの試験に3回落ち、仮免許の試験に1回落ちた時点ですでに、仲間たちは修了検定と呼ばれる卒業試験に向けて頑張っているところだった。
何度やっても失敗する。フィードバックを積み重ねても当たり前のことが出来ない。先に進めないために延々と同じことを繰り返し続ける補習での運転実習。高まる周囲からの心配の声。
それでも冷静さを欠かず真っ直ぐに修練を繰り返していたのだけれど、気づけば運転席に乗ることや自動車学校に向かうことが恐怖の引き金になっていた。
運転席に乗ろうとするとパニックを起こすようになり、自動車学校では音のざわつきや頭痛やめまいに悩まされるようになった。
このままでは気がおかしくなってしまう、と思い、もう私にはできないものだと諦めて退学することにした。講習が受けられないんだから、いてもどうしようもない。
 
明日の朝、同日入校者達と共にスーツケースを持ち同じバスに乗って駅前へと向かう。
この2週間時間を共にした、本免許の技能検定を受ける彼らと、仮免許さえ得ずにもはや金と時間を失って帰る私とを平等にバスは乗せて進むだろう。